コンテンツへスキップ

工藤与志文,宇野忍,白井秀明,荒井龍弥
小学校理科には、タネの発芽、花、光合成を学習内容とする単元がある。本研究では、単元の相互の関連づけを促進する教授プログラムを開発し、授業を行って、その有効性を検討した。すなわち、小学校6年生女子30名を対象に、光合成の授業後に、テキスト「植物の一生」を用いた授業を行った。このテキストは、植物は生き残るためにどのような戦略をとるかという文脈を利用して、学習者が植物のライフサイクルに各単元の学習内容を関連づけ、植物の形態や生態の持つ機能的意味を見いだせるように構成された。タネの発芽、花概念の内包、外延、光合成に関するテストが事前・事後テスト及び2回の遅延テストとして、計6回実施され、以下のような結果が得られた。1)テキストの有効性は4課題のうち2課題で確認された。2)テキストによる授業は、授業後でも目標を達成できなかった学習者層に特に有効であった。これらの結果から、教授プログラムの有効性が示された。

呉世現
本研究では、(1)乾電池に関して学習者はいかなる誤概念を持っているかを、韓国の小・中・高校生110人を対象に乾電池の寿命や重さを内容とする質問紙調査を行って、確認した。その結果、被験者の42%が「乾電池の中の中身がなくなると寿命になる」「寿命になるとその重さが軽くなる」などの誤概念に基づく判断をしており、しかも、そうした誤概念は「乾電池は電気の缶詰である」という知識から派生していることが確認できた。そこで、(2)このような派生関係にある誤概念体系を正しい知識体系に変換する修正ストラテジーについて検討した。誤概念体系の保持者に対して、個々の誤概念1つひとつを援助するより派生源の誤概念を正しいものに変換できるように援助を行った結果、彼らの63%が、派生源の誤概念ばかりでなく、それから派生した誤概念を正しいものに変換でき、乾電池に対する正しい認識を形成することができた。したがって、誤概念体系の学習者に、派生源の誤概念を正しいものに変換する援助を採用すれば、正しい知識体系に変換できると同時に乾電池に対する正しい認識を形成できることが確認できた。

佐藤康司,小倉裕美
本研究の目的は,物語教材の学習において,登場者の心情をより適切に解釈させるための教授方略の有効性を検証することであった。その方略とは,(1)描写の映像化方略:状況や行動の描写を具体的な情景としてイメージさせること,(2)解釈の検証方略:心情解釈の根拠となる文章をさがし解釈の妥当性を検討させること,の二つである。併せて,物語文の読解において何を重視するかという「読解観」の変容についても検討した。大学生27名を対象に「ごんぎつね」を教材とした授業を実施し,前後の調査結果を比較したところ,以下の点が確認された。(1)心情に関する根拠の希薄な恣意的解釈は修正され,より適切な解釈が獲得された。また、その解釈は複数の場面で一貫して利用された。(2)物語の主題や出来事の背景のように描写からは間接的な内容を重視する傾向が弱まり,個々の場面の描写を重視する読解観が優勢となった。授業経過などの分析から,解釈の検証方略の有効性が示唆されたが,描写の映像化方略については発問への具体化が不十分で効果を確認するに至らなかった。このことは読解観の変容が十分に大きくならなかった一因と考えられた

工藤与志文,宇野忍,白井秀明,荒井龍弥
本研究は、1)小学校理科5,6年の植物単元を対象に、教授者が意図的に関連づけを行わない条件下での単元学習効果の維持・定着の実態を明らかにするとともに、2)自発的関連づけの程度を探るために行われた。小学生33名の同一学習者群を対象に、5年時の植物の発芽および花概念、小学校6年時の光合成概念に関して、授業および同一課題による事前、直後、遅延テストを行い、学習者の理解の変化を縦断的に調査した。その結果、以下の結果が得られた。1)全体的傾向として授業による学習効果は高くなく、高い学習効果を持った学習領域でも、学習効果は時間的経過と共に失われることが多い。2)光合成概念の授業前後の花概念テスト成績の「復帰」を自発的関連づけの兆候と想定すると、a)復帰を示した学習者は極めて少ない。b)復帰を示した学習者は花概念の理解度が高い傾向にあった。c)復帰を示した学習者は光合成概念の理解度が高い傾向にあった。以上から、学習者は各単元の学習内容を自発的に関連づけることができず、関連づけの援助によって彼らの理解を促進できる可能性が示された。

伏見陽児,立木徹,市川洋子,岩崎哲郎
本研究の目的は、小学生向けの製作活動を小学校教師自らに体験させることにより、「小学校における製作活動」に対する彼らの捉え方をより良い方向に変容させ得ることを検証することにあった。この目的のため全7回(各回おおよそ90分間)よりなる講座「小学校における製作活動を考える」を開設し、各回とも製作活動を体験させた。主な結果は以下の通りであった。(1)小学生を念頭においた製作物であっても教師は十分に楽しんでその製作に取り組んだ。(2)研修で取り上げた製作活動について、当該活動が小学生に及ぼす教育効果をより高く評価するようになった。(3)小学校における子どもの製作活動全般に対する教師の情緒的イメージが、より肯定的な方向に変化した。(4)「小学校における子どもの製作活動」全般が持つ教育効果について、より高く評定するようになった。(5)普段の生活の中でものを手作りすることについて、肯定的側面を高く、否定的側面を低くとらえるようになった。

麻柄啓一,進藤聡彦
小学生にとって小数のかけ算の意味を理解することが困難であることは,これまで多くの教師や研究者が報告してきた。そしてその原因としては,小学生がかけ算の意味を同数累加と考えていることが指摘されてきた。われわれは,かけ算についての教師の不適切な理解が児童の困難を引き起こしているのではないかと考えた。研究Iでは,小学校教師が小数のかけ算の意味をどのように把握しているかを調べた。2つの問題を出題した。1つは,3.2×4.6の計算によって答えを出す文章題を作ることであった。もう1つは,2.7を3.6回足すとはどういうことだろうと考えて分からなくなっている児童に,2.7×3.6の意味を説明するという問題であった。最初の問題では約70パーセントの教師が適切な解答をしたが,第2の問題に関しては16パーセントに留まった。研究IIでは,かけ算の意味を教える読み物を作成し、それを用いて教員養成系の学生に教授活動を行った。高い効果が確認されたので、読み物で用いられた教授方針が全体として有効であることが確認された。