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高垣マユミ,田爪宏二,清水誠
本研究は、小学校5年生理科「もののとけ方」の観察・実験を通した協同学習の話し合い場面を通して、溶解時の質量保存に関して子どもたちが保持する素朴な理論を、科学的な理論へと促進する教師の介入方略を考案し、その効果を実証的に検証することを目的とした。事前・事後テストの記述分析及び発話事例の解釈的分析を用いて教授効果を検討した結果、以下の点が明らかにされた。1)子どもの生成する予測・観察・実験から得られるデータ、データから導かれる理論とを結びつける教師のリヴォイシングは、自己を変化させる方向性のトランザクティブディスカッションを生成させる。2)子どもどうしで主張する理論間のズレや矛盾点を明確化した上で、より精緻化された理論に再公式化する教師のリヴォイシングは、他者を変化させる方向性のトランザクティブディスカッションを生成させる。1)2)のトランザクティブディスカッションの生成は、理論の協同構築を促進させる可能性が示唆された。

麻柄啓一,岡田いずみ
中学校の理科では、とつレンズで光を集めるとその光を発した物の像ができることが扱われているが、大学生であってもこのルールを把握している者が少ないことが先行研究からわかっている。教科書を検討すると、光源の位置の変化に伴って像のできる場所や大きさがどのように変化するかが強調されている。このような扱いによって、「像ができる」というルール自体が把握されにくくなっている可能性が考えられる。調査1では大学生を2群に分けて、グループ1に対しては像ができること自体を強調し、グループ2に対しては像のできる位置と大きさを強調した。事後の標的問題での正答率はグループ1の方が高かったが、その値自体は十分高いものではなかった。調査2では、さまざまな光源を用いた場合の光の道筋とスクリーンにできる像を描くことを被験者に求め、さらにルールも強調した。しかし標的問題での正答率は上昇しなかった。調査3では、調査2の被験者に対して、なぜこのルールを標的問題で用いなかったのかを質問した。その結果、彼らの誤解がいくつか明らかになった。これらの結果に対して、授業の改善の観点から考察を加えた。

進藤聡彦,麻柄啓一
言語教材は一般に「pならば(は)qだ」という命題の形で書くことができる。前件pを具体化した事例は代入例と呼ばれてきた。先に著者たちは命題の後件「qである」を具体化することによって別のタイプの事例を作ることができることを示し、これを象徴事例と名づけた。どのような条件を満たす象徴事例が命題の学習に有効であるかを明らかにすることは重要な仕事となる。本研究では明治時代に関するある陳述命題について3つの象徴事例を準備した。学習セッションでは大学生の3グループに象徴事例を1つずつ提示して、その後に事後テストを行った。この問題では多くの学習者が誤った認識に基づいて答えるため間違うことがすでに確認されているが、象徴事例を用いれば正解を出すことができる問題であった。われわれはさらに、象徴事例を参考にして答えたか否か、また参考にしなかった場合はそれはなぜかを質問した。その結果、何人かの学習者は象徴事例に関してわれわれの期待とは異なる解釈をしていることが明らかとなった。また別の何人かは提示された象徴事例を認知構造の中にうまく取り入れることができないので無視してしまうことが明らかとなった。逆に言うと、このような「無視」や「別解釈」が生じない象徴事例が有効であることが明らかとなった。第2実験では2つの象徴事例を同時に学習者に提示することの効果を検討した。その結果、この方法は学習者の誤った認識を修正するのに非常に有効であることが確認された。