コンテンツへスキップ

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例,概念の学習
本実験は,伏見・立木(2009)の研究結果をふまえ,焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響をさらに検討したものである。「緑の植物(種子植物)は花を咲かせ,花の咲いていたところに種子をつける」というルールを取り上げ,大学生206人を対象に実験を行った。実験は,事前テスト,文章教材の読み取り,操作課題,信念課題,事後テストの順に実施された。2種の文章教材を用意し,一方の群には学習者の既有知識(誤概念)と抵触する事例(サツマイモ)を,他方の群には誤概念と抵触しない事例(アサガオ)を用いてルールを説明した。その結果,〈1)提示事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぽさないこと,(2)誤概念と抵触する事例(サツマイモ)を用いる効果はおもに正誤群(操作課題に正答,信念課題に誤答)の事後テスト得点の伸びに現れることが示された。伏見・立木(2009)と同様の結果が得られた。抵触する事例を用いることの効果は、誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕科学的知識の学習,情感の生起,大学生
本研究の目的は「科学的知識の学習は情感の生起に関係する」という考えを実証することにある。実験1では大学生40人を対象にして「人間の背骨」の特徴を記述した読み物教材を読ませた。その結果,当該学習内容をより良く学習した者の方が,そうではなかった者に比べ,人間の背骨の仕組みに「すごさ」「すばらしさ」などの情感をより多く生起させた。実験2では大学生80人を対象に「親潮と黒潮の特徴」という内容が「気体の溶解度」と関連づけられた場合の情感の生起について検討した。実験の結果,2つが関連づけられると,関連づけられなかった場合に比べ,自然の仕組みのすばらしさや美しさに強い情感を生起させる者が多く生じた。

林原慎
〔キーワード〕国際理解,参加型学習,ビッグ・ファイブ,認知的熟慮性-衝動性,小学生
本研究の目的は,近年,多く実施されるようになった参加型学習を取り入れた国際理解教育において,児童の性別,経験,背景,主要5因子説(ビッグ・ファイブ)の性格,認知的熟慮性-衝動性がどのように影響するのかを実証的に明らかにすることであった。研究の結果,小学校5年生(70名)では,性別,経験(海外旅行経験,英会話教室への参加経験),背景(友人,親戚,教貝の数)は,授業理解度と国際理解の意識に影響を与えないことが分かった。一方,協調性および熟慮性は国際理解の意識に影響していた。協調性,統制性および熟慮性は授業理解度に影響していた。また,参加型学習の活動のみに満足した児童は,参加型学習の内容に満足した児童よりも効果が低いことが分かった。活動のみに満足した児童は,他の児童に比べ,統制性と熟慮性が有意に低かった。内容に着目できている児童は授業理解度において得点が高かった。結果として,授業の効果は児童によって差があることが分かった。

小石川秀一
〔キーワード〕教員養成課程,理科教育,認識の転換,小学校教員志望学生,光合成学習
小学校教員養成課程で行われる教育により、理科教育に対する学生の認識はいかに変化するのか。本実践では、光合成学習を例にこの問題を検討した。まず、理科指導法を受講する小学校教員志望学生を対象に、光合成に関する認識調査を実施した。その結果、「光合成するのは葉」という事実は知っているものの、個別的な知識に基づく判断が中心であり、小学校での体験以上の認識が育っていないことが伺われた。体験的な学習の積み重ねをする小学校の教育は、その後の学習体験において相当に重要な役割を果たすが、それを乗り越える認識の形成はなされていないようであった。そこで、ヨウソ反応実験などを通じて、光合成=葉という認識を超えることを目標とする授業プランを作成・実践し、光合成に関する認識を広げていくことを目ざした。授業後の感想文の分析から、学生たちの光合成に関する知識が広がっただけでなく、理科および理科教育に関する認識の転換が生じたことが伺えた。学生が形成している認識の実態を把握するとともに、それを転換していくような教育をおこなうことが教員養成課程において大切である。

舛田弘子
〔キーワード〕説明的文章,読解,観点,道徳的読解スキーマ(MRS),文章依存性
異なる2種類の説明的文章を用いて,MRSの活性化における文章依存性の有無を検討した。被験者は,大学生女子63名であり,前期の講義中に材料文①,後期の講義中に材料文②の読解と質問への回答が行われた。結果として,MRSは特定の説明的文章にのみ観察されるものではなく,様々な説明的文章に現れる可能性のあるものであることが確認された。加えて,MRSは特定の読者が一貫して活性化するものというよりは,文章内容によって活性化が生じる場合と生じない場合がある可能性が示された。ただし,MRSの活性化を一貫して生じない読者が存在することが推測される。また,不適切な読解を行った読者と,適切な読解を行った読者との間に,MRS活性化に関して有意な差はなかった。MRSの活性化と深い関わりがある読解として,読者は文中の曖昧な表現を単純化し,著者の主張部分を積極的に読み取っている傾向が示唆された。</p>

高垣マユミ,田爪宏二,中島朋紀,丸野俊一
〔キーワード〕二面的開示の分析,授業コミュニケーション,意図されざるカリキュラム,教師の役割の多様性,交流的関係性
本研究の目的は,小学4年国語科の一斉授業において,従来見過ごされてきた,教師の意図したカリキュラムから逸脱した教授・学習活動に焦点を当て,その談話過程における教師と子どもの授業コミュニケーションの言葉や行為の背後では,いかなる心理的なやりとりが立ち現れているのかを,探索的に検討することである。教師の内観報告を踏まえながら,「二面的開示分析」に依拠したカテゴリー分析及び事例分析によって,教師と子どもの発話の逐語的・表層的内容ではなく,意味的内容を再生した結果,以下のことが実証的に明らかにされた。1)教師の意図せざるカリキュラム(unintended curriculum)における,教師と子どもの主体的側面における「認識レベル(表層的,論理的,感性的レベル)」の齟齬は,教師の振る舞う多様な役割に伴って変容することが明らかになった。2)教師の意図されざるカリキュラムにおいて,相互に依存し合っている「教師-子ども-カリキュラム」の関係性が,動的,相補的かつ一体的に変化した場合,「interaction(相互的関係性)」から「transaction(交流的関係性)」への転換が生み出される可能性が示唆された。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例の適い,概念の学習
概念学習を阻害する要因の1つとして,学習者の論理変換操作の不十分さが指摘されている。本研究の目的は焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響を検討することにある。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。実験は事前テスト,文章教材の読み取り・操作課題,信念課題・事後テストの順に実施された。2種の文章教材が用意され,一方は誤概念と抵触する焦点事例(カルシウム)を,他方は誤概念と抵触しない焦点事例(銅)を用いてルールを説明した。その結果,(1)焦点事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぼさなかったこと,(2)抵触する焦点事例を用いた場合には,操作課題ができていれば信念課題ができなくても事後テスト得点の伸びを抑制しなかったが,抵触しない焦点事例を用いた場合には,事後テスト得点の伸びを抑制したことが示された。誤概念と抵触する事例を用いることの効果は,誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

岡田いずみ
〔キーワード〕割合文章題,分数表示方略,小学生,統合過程
割合の文章題を解くことは小学生にとって難しいことがこれまでの研究で示されてきた。いくつかの研究では,学校で学習した公式を用いずに解く児童が多くいることも示されている。これは,割合文章題の解決を困難にしている原因のひとつに公式の使いにくさがあることを示すものである。本研究では,算数の文章題についての心理学研究の知見に基づいて,割合文章題に関するよりよい教授方法を考案しその効果を検討した。算数の文章題を解決するためには統合過程の成立が重要であるとされる。統合過程を成立させるために,児童にとって既知の内容である分数を用いた方略(分数表示方略)を教授した。小学6年生125人を対象として,事前テスト,介入授業,事後テスト,2週間後の追加調査を実施した。正答率は,事前(64%)から事後(90%)に上昇した。追加調査においても正答率は維持されており,今回の教授方法の効果が確認された。