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尾之上高哉,丸野 俊一,松尾 剛
〔キーワード〕話し合い,学び合い,談話方略,教師の認識,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の実現に向けて,教師は,児童の実態に応じながら如何に談話方略を運用しているのかを明らかにすることであった。学び合う授業づくりに熟練した教師が担任となった学級を対象に,縦断的な授業観察,教師へのインタビュー調査を行った。結果,教師は,⑴発言への消極性・伝え合う意識の低さを児童の実態と認識していた時期は,⒜児童の発言をそのまま言い直す働きかけを通して,児童に肯定的な評価を示し安心して発言できるようにする事や,他の児童に発言の内容を正確に伝える事を,⒝個人内の思考を明確にさせる働きかけを通して,伝え合うために必要な話し方や思考の仕方を学ばせる事を,図っていた。そして,⑵発言への意欲・伝え合う態度の芽生えを児童の実態と認識し始めた時期からは,⒜児童の発言に新たな意味を付与して言い変える働きかけや,⒝考え相互の関係性を思考させる働きかけを通して,児童が互いの考えを相互に繋いでいけるようになる事を,図るようになっていた。教師がそのように児童の実態に応じて談話方略を使い分けていたことが,徐々に児童主体の学び合いを授業の中に定着させていくことへと繋がったことが示唆された。

髙橋亜希子
〔キーワード〕総合学習,高校生,分化,課題の成立
本研究は個人課題設定形式の総合学習実践に対する質問紙調査の分析・事例研究を通して,高校での総合学習への生徒の取り組みの分化の要因の検討を行った。研究1として継時的な質問紙調査の分析を行い,満足度の高い・低い生徒間で学習の「楽しさ」「価値」に関するイメージが分化することを確認し,満足度と興味関心の安定性,教員の支援,作業の負担との関係を示した。研究2では事例研究を通し「テーマを意識しその関心を展開する過程」「研究として仮説を立て資料を収集し問いを解く過程」の二つの重なりを分化の中核要因として抽出し,補助要因として「興味・関心の事前の意識化の度合い」「適切な計画・方法の選択」「教員の適切な支援」「学習体験を通し問題意識や手ごたえを得る経験の有無」を得た。分析を通し学習対象への興味・関心の安定性が一貫して分化の要因として得られたことから,生徒が学習対象への安定した関心を持つ場合には手ごたえが得られ作業が進むが,学習対象への関心を失うと追究の方向性を見失い徒労感のみが増すことが,生徒の分化の背景にあると推察された。そのためテーマ設定や学習過程での支援の必要性が示唆された。

佐藤誠子
〔キーワード〕面積学習,外的操作活動,公式,等周長変形,小学6年生
基本的平面図形の求積公式を学習した後の学習者でも,図形の具体的な長さの数値が与えられていない問題状況になると,公式を使えず,底辺や高さの相対的な大小から面積の大小を推論することができない者が少なくない。本稿では,数値がなくとも底辺と高さの変化から面積変化を導出できることを理解させ,面積が直交する2方向に拡がる量であることを実感させるために,等周長変形を教材として用いた授業プランを立案し授業実践を行った。授業での主要なポイントは,①等周長変形を紙上で提示するのではなく,実際の手操作として行わせること,②具体物を用いて連続的な等周長変形に伴う面積変化を実感させることであった。授業の結果,等周長変形の操作活動を通して面積変化を捉えることの面白さに言及する感想が多くみられ,具体的数値がなくとも公式を用いて面積変化を推論することの面白さを実感させることができた。しかし同時に,具体物によって示された現象的な面積の理解にとどまった学習者もみられた。具体物の操作活動によって抽象的概念を捉えさせる際,授業者側のねらいと学習者側の認識との間にずれが生じてしまう可能性があることが課題として指摘された。

舛田弘子
〔キーワード〕説明的文章,読解,道徳的スキーマ(MRS),結論,適切性判断
本研究の目的は,短い文章を提示し,それへの結論の選択及び結論の自由記述によってMRS的読解の生起を確認し,加えて適切な結論に対する研究参加者の判断との関連を検討することである。大学生55名を対象に,文章の読解と選択肢による回答,および結論の自由記述を行ってもらった。結果として,以下のことがわかった。即ち,①100字程度の短い文章においても,不適切な道徳的読解(MRS読解)が生じる。②結論を記述する方が選択肢によって選ぶよりもMRSに親和的になりやすい傾向がある。③「自分の意見を,興味深い形で提示する」ということ,加えて「結論には文章から学べることを書くべき」という意識,あるいは「教訓を読み取れること」が,良い結論としての条件であるととらえられている事が推測される。

宮田佳緒里
〔キーワード〕誤認識,説明文と図からの学習,力の分解,大学生
変数間の共変関係を可視化する図の呈示は,関係性の理解を促進することが知られている。特に,教授内容に関する知識の少ない者に対して,図の呈示は効果を持つ。一方,教授内容に関する誤認識を有する者に対しては,図の呈示による教授活動が必ずしも効果を持たないとの知見もある。そこで本稿では,学習者の有する誤認識が説明文と図からの情報の読み取りにどのように影響するかを検討した。大学生134名を対象に,教授内容である力の分解に関する認識調査,及び説明文と図による力の分解の教授活動を行った。その結果,誤認識所有者は,呈示された分力の値を誤りと判断した者の比率が高く,誤認識と一致しない情報を妥当性が低いとの理由で受容しない傾向が示された。このことから,変数間の共変関係に関する学習者の認識は説明文と図から読み取られた情報の妥当性を吟味するために用いられ,認識と一致しない情報の受容に妨害的に作用すると推察された。

 

江川克弘
〔キーワード〕模倣,グループ学習,動機づけ
学習に関する様々な調査から,子どもたちの学習意欲ならびに算数科の学力の低下が報告されている。教育現場では,算数科の苦手な児童に容易に適用でき,学習への動機づけを高め,学力を伸ばすことのできる学習方法が必要とされている。その1つとして,本研究では「グループ学習に模倣を取り入れた学習方法」を取り上げ,その有効性を検討した。学習方法適用群と不適用群を設定し,各群で算数科の苦手な児童を1人対象児として選定した。適用群と不適用群で対象児の事前・後の算数科の授業中の行動とテスト成績について比較を行った。結果は,適用群対象児の方が学習への動機づけを高め,算数科の学力も伸びていた。また,適用群と不適用群で事前・後の算数科のテスト成績の群間比較も行った。結果は,事後テストにおいて適用群の方が有意に高い成績であった。また,適用群の児童に本研究の学習方法の有効性について質問紙調査も行った。結果,児童は概ね有効性を感じていた。以上のことから,本研究で行われた学習方法は,どのような児童にも容易に適用でき,算数科の学習への動機づけも学力も高めることができるものであることが示唆された。