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大道一弘
〔キーワード〕等周長問題,高さ判断,視覚的判断,大学生
本論文の目的は,等周長問題(長方形の底辺を固定し,各辺の長さを同じに保ちつつ平行四辺形に変形した場合に,面積がどうなるかを問う課題)の解決における高さ判断の役割について検討することであった。従来,等周長問題においては,多くの者に誤りが見られることが指摘されてきたものの,高さ判断には問題がないものと仮定されてきた。しかし,大学生49名を対象とした3つの課題からなる実験の結果,(1)実験参加者全体の57%に高さ判断の誤りが見られること,(2)そのような者には視覚的判断といった直感的な判断を行っている者が多いこと,(3)面積,高さの両方に誤答した者でも,54%は補助線による高さの明確化によって面積判断も改善されること,(4)そのような者の31%は,補助線のない元の問題では面積,高さともに誤った判断に戻ってしまうことが示された。これらの結果から,等周長問題における高さ判断は多くの参加者にとって容易ではなく,高さ判断の誤りは等周長問題の誤りをもたらす要因の1つであると考察された。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕学び合い,対話,授業,共感性,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で「共感性の重要性や意味(=共感性の価値)」を学ぶ体験を通して,共感性得点に変化がみられるか否かを明らかにすることであった。1学期から2学期の授業の中で「学び合う授業」が展開されるようになったことが示された学級の児童を対象に分析を行った。まず,児童は,学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得るのかを検討した結果,(1)インタビューの中で,共感性の価値に言及する内容を自発的に語るようになっていること,(2)授業のやりとりの中で,自発的に共感的振る舞いに取り組むようになっていること,(3)「共感性の価値」の実感の程度を調べる質問紙得点が,1,2学期の間に有意に増加していること,の3点から,児童は学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得ることが示された。次に,授業の中で体験した「共感性の価値」の学びが,共感性の高まりに繋がっているかを検討した結果,1学期から2学期にかけて「共感性の価値」得点が増加した児童の多くは,「共感性」得点にも高まりが示されることが確認された。本研究の結果からは,学び合う授業が,児童の共感性育成の場として機能し得ることが示唆された。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕話し合い,学び合い,発言行動,教師の働きかけ,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で,教師がどのような働きかけを実践していくことが,「児童が積極的に発言できるようになる」という変化を引き起こすことに繋がっていくのか,を明らかにすることであった。学び合う授業に熟練した教師が担任となった学級の児童のうち,「1学期当初は,発言することに強く抵抗し,ほとんど発言できなかったが,2学期後半頃から自発的に発言できるようになった」T児に注目し,T児の変化を生み出した教師の働きかけを,教師・T児・観察者の3つの視点から総合的に分析した。その結果,児童の積極的な発言行動を促すためには,次のような教師の働きかけが重要であることが示唆された。それは,児童に可能な範囲で発言を試みさせる過程で,①クラスの児童達が,発言児に対して共感的に関われるようになるための働きかけを行うことにより,児童達が「自分の発言に対して,周囲のみんなは共感的に関わってくれる」と認識できるようにすること,②発言することの意味を明示的にも潜在的にも伝える働きかけを行うことにより,児童達が「自分が発言することは,ここでの学びを深めていくために役に立つ」と認識できるようにすること,である。

工藤与志文,小石川秀一
〔キーワード〕理科授業,電流の学習,認識のずれ,小学生,教師
本論文は,小5「電流が生み出す力」の授業実践における子どもの認識とそれに関する教師の認識とのずれを示す事例の報告である。これらの事例では,事実認識
とコトバの意味に関して,教師の想定していた子どもの認識と実際の子どもの認識が大きく食い違っていた。4つの事例の分析を経て,以下の点が論じられた。 ①事例で示された認識のずれは,教師と子どものやりとりの中で初めて顕在化するような微妙なものであったが,授業目標の実現に大きな影響を与えるもので
あった。②子どもの思考は具体的なイメージにしばられる傾向があり,これが認識のずれをもたらす要因の一つであった。また,コトバの操作だけでイメージを 変化させるのは困難であった。③子どもたちに抽象概念を理解させるために,具体的な現象に置き換えて教えることは重要だが,それだけでは,個別の現象の学
習にとどまってしまう可能性が高いことが示された。この点を克服するためには,抽象概念と個別的現象を結びつけるはたらきをもつ経験が重要である。