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佐藤誠子,工藤与志文
〔キーワード〕ルール学習,属性ルール,カテゴリールール,推論,種子植物のルール学習
本研究は,種子植物の生殖ルール「花が咲く植物にはタネができる」の適用を促す教授法の効果について検討を行うものである。この生殖ルールはカテゴリーの包含関係を表すカテゴリールールとして捉えられるものであるが,学習者にとってルール命題の自発的な変形操作や具体的な予測の導出が困難であることが先行研究により示唆されてきた。そこで本研究では,生殖ルールに加えて「花の形が似ていれば,実やタネの形も似ている」という形ルールを提示することを提案した。形ルールは具体的な花の形と実・タネの形という属性の連合関係を表す属性ルールとして捉えられ,先のような生殖ルールによる処理の困難さを克服させることが期待された。大学生70名を対象に検討を行った結果,形ルールの追加提示は,花からタネ,実から花の存在の推論を促すこと,さらには,生殖ルールの逆操作を自発的に行えなかった者でも実から花の存在を推測する逆向き推論を可能にすることが示された。形ルールを提示する有効性は,アブダクション形式の推論を可能にすること,また,生殖ルールよりも具体性を持つ点で学習者にとって理解しやすく使いやすいルールであることにあると考察された。

田中瑛津子
〔キーワード〕興味,ポジティブ感情,日常関連価値,理科教育,適性処遇交互作用
中学2年生を対象にした授業場面において,興味の二つの側面であるポジティブ感情と価値の認知に着目し,興味の深化を促すための介入の効果を検討した。本研究では理科の授業を扱うことから,価値の中でも,「学習内容は日常生活と関連がある」という認識である日常関連価値の認知に焦点を当てた。実験1では,授業の導入時に意外な結果が生じる実験を提示してポジティブ感情を喚起し,「これから学ぶ内容を理解すれば結果を説明できるようになる」と具体的な達成目標を示して積極的授業参加を促進した。すると,日常関連価値の一般化強調の効果が引き出されることが示された。実験2では,日常関連価値への介入には,生徒の意味理解志向による調整効果があることが示された。すなわち,日常例の提示と日常関連価値の一般化の強調だけでは意味理解志向の低い生徒には不十分であることが示された。日常場面の問題を自分で解き説明する活動を加えることで,意味理解志向の高低に関わりなく,日常関連価値の認知が効果的に高まることが示唆された。

高垣マユミ,松尾剛,丸野俊一
〔キーワード〕GR(グラウンド・ルール),教室談話,カテゴリー分析及び解釈的分析,朝の会,小学校1年生
本研究は,話し合いの基盤となるGR(グラウンド・ルール)の共有過程における教師の働きかけの特徴を,授業外の文脈である「朝の会」という視点から検討した。小学校1年生を初めて担任する教師の1学級を対象に,入学導入時期の朝の会の場面を,4月から7月の1学期間に渡って参与観察した。談話過程のカテゴリー分析及び解釈的分析の結果,教師は児童に対して,朝の会で話題とした考え方や態度を通して,自らの会話や行為を振り返る枠組みとして,「自分の行為の制御」,「他者との積極的な関わり」,「他者との関わりを通じた自他理解」の3つのGRを生成し, 運用していることが明らかにされた。その時,教師は児童の状況や反応に応じて柔軟かつ即時的に話題を転換しつつ,児童との互恵的な関係性において,3つのGRを学ぶ機会を作り出していた。その過程における教師の働きかけとして,学校生活全般にわたる児童の過去と現在の行動様式を比較したり,ラベル化したりしていた。これらの教師の働きかけは,「日常生活との関連づけ」,「話題の流動化」,「過去の記述」,「変容の感覚(正・負)の可視化」,「自己開示・感情の表出」,「行動様式のラベル化」,「思考の促し」の7つのカテゴリに分類され,話し合いの経験が十分ではない1年生の児童に対して,共有可能な経験知としてGRを学ばせていることが示唆された。

蛯名正司
〔キーワード〕高さ,平面図形,斜辺,同定方略,小学6年生
三角形や平行四辺形の面積の学習では,高さの理解が重要であるが,高さの同定を誤る児童は少なくない。そこで,本稿では高さの同定を促進するために,斜辺を用いる方略を考案し,その効果を検証した。斜辺を用いる方略とは,「図形の斜辺を見つけ,斜辺の一番上から底辺に垂直に線を引く」というものであり,この方略を用いることで,斜辺と高さを混同する誤りが抑制されることが予想された。また,斜辺を用いる方略を導入する際に,斜辺をハシゴ,底辺を地面と対応させることで,方略の理解が促進されると予想された。小学6年生を対象に,ほぼ同様の授業を2度実施した(授業1,授業2)。その結果,授業1・2の両方で高さの作図課題の正答率が上昇し,授業2では一部の求積課題の正答率も上昇した。また,授業の感想に記述された内容から,斜辺を用いる方略を使って同定することや,斜辺をハシゴ,底辺を地面と見なすことが有効であることが示唆された。一方で,授業で用いた課題との類似度が低い求積課題では,依然として「底辺×斜辺」という誤りが見られたことから,方略の教示だけでは,抽象的な高さ概念を獲得するには不十分であることが示唆された。