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渡邉大輔
〔キーワード〕高校化学教育,炭素化合物の化学,教育内容,原油の精製,熱分解
本論は,高校化学教育における炭化水素基と官能基の区別に関して,従来の教育内容の問題点を指摘し,新たな教育内容の骨子とその論理的骨格を提示することを目的としている。そのためにまず,自然の累層性に関する田中一の議論に着目し,変化しにくい部分と変化しやすい部分の区別を,熱分解技術による原油精製物によって行う根拠を明らかする。次に,精製という行為の意味も含めて指導の内容としなければならないとの立場から,原油の精製に関する技術史的分析を行う。ここでは原油精製の動機を「不安定な品質の認識を媒介とする品質の安定性への要求」と理解し,「厄介物から有用物を作り出す」という行為に精製の意味を見出す。その上で「材料としては役に立たないものが化学変化によって,天然には存在しない新しい性質を備えた材料になり,変化するがゆえに役立つもの,別な物質になるからこそ役立つもの,それが物質(化学的物質)substanceである」との見地を教育内容構成の基本的視点として設定し,教育内容の全体構造を統一することを試みる。以上の検討をふまえ,教育内容の骨子とその論理的骨格を具体的に提示する。

伏見陽児
〔キーワード〕ルール学習,事例効果
工藤(2003)は,学習ルールの説明に用いられる事例によって学習成果が異なるという現象(事例効果)の新たな説明を検討し,多くの学習者が教材からルールを抽出できないという事実から,事例効果が「事例にもとづく帰納学習」によって説明できることを示した。本研究は工藤(2003)の研究において残された問題を検討する目的で行ったものである。学習者は,サクランボ事例もしくはスギ事例を使って,「どんな花の花粉でも,身体に入れば入るほど花粉症が引き起こされやすくなる」という花粉症のルールを明示的に教えられた。実験の結果,学習者がルールを抽出できなかった場合だけでなく,ルールを抽出できた場合でも「事例効果」が生じた。事例効果は,「事例にもとづく帰納学習」だけでは説明のつかないことが明らかとなった。

ファウラみどり
〔キーワード〕小学校,算数,やる気,認知スタイル,熟慮衝動型
本研究の目的は,小学校6年生を対象にした算数の学習において,①やる気が喚起される場面を把握すること,②熟慮衝動型認知スタイルがやる気の喚起される場面に及ぼす影響を明らかにすることであった。公立小学校7校247名(有効回答222名)に質問紙による調査を実施し,因子分析を行った結果,「充実・実用志向」,「関係・自尊志向」,「活動的授業志向」の3因子構造が確認された。これらの3つの因子と熟慮衝動型認知スタイル群(上位群・中位群・下位群)を二元配置の分散分析によって分析したところ,熟慮型傾向の強い子どもの方が,「充実・実用志向」「関係・自尊志向」「活動的授業志向」のいずれの場面においてもやる気が喚起されている傾向が示され,熟慮衝動型認知スタイルがやる気の喚起される場面に影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに,熟慮衝動型認知スタイル群ごとに比較した結果,上位群(熟慮型傾向)では「充実・実用志向」,下位群(衝動型傾向)では「活動的授業志向」の優位性が高く,熟慮衝動型認知スタイル群によってやる気が喚起される場面が異なることが明らかとなった。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕数学的証明,ピタゴラスの定理,美しさ評定
本研究はピタゴラスの定理の証明法を複数提示することが,その証明法の美しさ評定にいかに影響するかを検討したものである。研究は実験1と実験2よりなり,両実験は各々2つのセッションからなっていた。1つはピタゴラスの定理の証明法についての講義,1つは当該証明法の美しさ評定であった。実験1の複数群には,一般に共に美しいと評価されている2つの証明法(AとB)が用いられた。単一群には,複数群に提示された証明法の1つ(B)が用いられた。その結果,同じ証明法Bであっても美しさ評定が異なり,複数群の方が単一群よりも高く評定した。実験2の手続きは実験1と同じであったが取り上げられた証明法が異なった。複数群には,一般に美しいと評価される証明法Bと,美しいとは評価されない証明法Cの2つが用いられた。単一群には,複数群に提示された証明法のうち,一般に美しいとは評価されない証明法Cの1つが用いられた。その結果,同じ証明法Cであっても美しさ評定が異なり,複数群の方が単一群よりも低く評定した。証明法の複数提示の効果は,用いる証明法の組合せによって異なることが明らかとなった。

進藤聡彦,麻柄啓一
〔キーワード〕教授方略,概念変化,社会的関係性,他者からの期待,理科の協同学習
本研究では,Maehr & Midgley(1991)によって提案された動機づけ構造の各下位次元(課題,権限,グルーピング,評価)を,授業実践に結びつけ,わが国の小学4年理科「もののかさと温度」の協同学習場面に適用した教授方略を考案した。授業実践を通して,導入した教授方略が,個人内における科学的概念の変化,及び個人間における学習行動の変化に,どのような効果をもたらすのかを探索的に検討することを目的とした。単元前後における動機づけの質問紙調査に基づく数量的分析,「粒子の熱運動」の保持概念に基づく記述分析,毎時間の授業過程における発話と行為に基づく解釈的分析の結果,以下の点が明らかになった。1)本授業で考案した教授方略は,粒子の熱運動の「科学的な概念(空気の温度が上昇すると,体積は増えるが質量は変化しない)」の獲得を促すことが示唆された。2)参加への配慮と話し合いを保証する,自己評価の確認の基に相互評価による修正を行う,という教授方略の要素の機能は,社会的関係性の「友だちからの期待」を促すことが示唆された。

高垣マユミ,田爪宏二,中西良文
〔キーワード〕教授方略,概念変化,社会的関係性,他者からの期待,理科の協同学習
本研究では,Maehr & Midgley(1991)によって提案された動機づけ構造の各下位次元(課題,権限,グルーピング,評価)を,授業実践に結びつけ,わが国の小学4年理科「もののかさと温度」の協同学習場面に適用した教授方略を考案した。授業実践を通して,導入した教授方略が,個人内における科学的概念の変化,及び個人間における学習行動の変化に,どのような効果をもたらすのかを探索的に検討することを目的とした。単元前後における動機づけの質問紙調査に基づく数量的分析,「粒子の熱運動」の保持概念に基づく記述分析,毎時間の授業過程における発話と行為に基づく解釈的分析の結果,以下の点が明らかになった。1)本授業で考案した教授方略は,粒子の熱運動の「科学的な概念(空気の温度が上昇すると,体積は増えるが質量は変化しない)」の獲得を促すことが示唆された。2)参加への配慮と話し合いを保証する,自己評価の確認の基に相互評価による修正を行う,という教授方略の要素の機能は,社会的関係性の「友だちからの期待」を促すことが示唆された。

蛯名正司
〔キーワード〕角度,不適切属性への着目,重ね合わせ,測定,算数困難の小学4年生
本稿は,算数の学習に困難を抱える小学4年生の男児を対象として実施した,角度の教授活動に関する実践報告である。対象児は,学校では角度を学習済みであったが,角度の大きさを比較する際に,不適切属性に着目する誤りがあった。そこで,1回目の教授活動では,不適切属性への着目を抑制するために,まず図形の重ね合わせ活動を行い,次に分度器を使った角度の測定活動を実施した。その結果,対象児は図形の重ね合わせ活動で直線と直線の重なりに注目することができず,さらに分度器で測定しない場合は角度の大小比較を正しく行うことができなかった。そこで2回目の教授活動では,活動の順序を入れ替え,まず分度器で角度の測定を行い,次に扇形の重ね合わせ活動を行った。その結果,扇形の重ね合わせ活動では,未測の角度であっても,重ね合わせによって角度が同じであることを判断できるようになった。このことから本稿の対象児にとっては,「測定を優先した角度の指導」の方が有効であることが示唆された。以上の結果を踏まえ,本稿で実施した「測定を優先した角度の指導」と,いわゆる「測定の四段階指導」に基づいた従来の角度の指導の有効性の範囲について論じた。