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栗山和広,吉田甫
〔キーワード〕割合概念,認知的障害,インフォーマルな知識,等全体
本研究の目的は, 全体の大きさは同一であるという割合の等全体についてのインフォーマルな知識を明らかにすることであった。参加者は, 割合を学習していない4年生が58名と5年生が57名, 割合を学習している6年生69名であった。等全体には2種類の問題があった。1つは, 基準量が同じである問題で, もう一つは, 割合の基準量が異なる問題であった。基準量が同じか異なる問題において, 比較量と割合の大きさを比較することが求められた。その結果, 基準量が同じか異なる問題のいずれにおいても比較量の大きさの判断の成績は高かった。しかし, 基準量が異なる問題において割合の大きさの判断の成績は低かった。このことから, 子どもはインフォーマルに等全体の比較量については理解していることが示唆された。

工藤与志文
〔キーワード〕理科実験,観察の理論負荷性,重さの保存性,誤ルール,小学生
本論文では,小3理科授業において,「塩は水にとけない」という事実誤認が生じた事例を報告する。当該授業では,重さの保存性に関するルール(出入りがなければ重さは変わらない)の理解を目標の一つとしていた。一連の理科実験では,発泡入浴剤を水にとかして,泡(気体)の発生による重さの減少を観察させた。さらに,塩を水にとかす実験で,とけても物の重さは変わらないことを観察させた。しかしながら一部の児童は,入浴剤がとけたので重さが減った,重さが変わらないのだから食塩は水にとけないと結論づけてしまった。これらの事実は「観察の理論負荷性」の観点から考察され,「とけると重さが減少する」という誤ルールを持った児童と授業者は互いに異なった観察行為を実践していた可能性が示された。

蛯名正司,宮田佳緒里
〔キーワード〕速さ・距離・時間の弁別,等速性の理解,単位時間あたりの距離,特別支援,小学6年生
本研究は,発達障害(ADHD)のある小学6年生男児を対象に実施した,速さの学習に関する実践報告である。対象児は,速さの公式を用いた課題解決は可能であったが,「速さの保存課題」では一定の速さで進む物体であっても「距離の短いほうが速い」という誤りを一貫して示した。そこで,第1回教授活動では,電車の模型を使用して,速さを「ノロノロ」,「スイスイ」,「ビュンビュン」と定性的に教示し,さらに比例関係を用いて速さ・時間・距離の弁別を促す活動を実施した。しかし,事後調査では,依然として速さ―距離の保存課題で不適切な反応が見られた。そこで,第2回教授活動では,速さの異なる電車模型を2台用いて,単位時間あたりの距離を計測したあと,速さを直接比較する活動を実施した。その結果,対象児の速さの捉え方が「距離の短い方が速い」から「距離の長い方が速い」に変容したことが示唆された。事後調査課題では,単位時間あたりの距離が等間隔であることを図で示された課題には解決できたが,速さ-距離の保存課題では依然として誤った反応を示した。以上の結果を踏まえて,本実践で実施した教授活動の有効性と限界について論じた。