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高垣マユミ,松尾剛,丸野俊一
〔キーワード〕GR(グラウンド・ルール),教室談話,カテゴリー分析及び解釈的分析,朝の会,小学校1年生
本研究は,話し合いの基盤となるGR(グラウンド・ルール)の共有過程における教師の働きかけの特徴を,授業外の文脈である「朝の会」という視点から検討した。小学校1年生を初めて担任する教師の1学級を対象に,入学導入時期の朝の会の場面を,4月から7月の1学期間に渡って参与観察した。談話過程のカテゴリー分析及び解釈的分析の結果,教師は児童に対して,朝の会で話題とした考え方や態度を通して,自らの会話や行為を振り返る枠組みとして,「自分の行為の制御」,「他者との積極的な関わり」,「他者との関わりを通じた自他理解」の3つのGRを生成し, 運用していることが明らかにされた。その時,教師は児童の状況や反応に応じて柔軟かつ即時的に話題を転換しつつ,児童との互恵的な関係性において,3つのGRを学ぶ機会を作り出していた。その過程における教師の働きかけとして,学校生活全般にわたる児童の過去と現在の行動様式を比較したり,ラベル化したりしていた。これらの教師の働きかけは,「日常生活との関連づけ」,「話題の流動化」,「過去の記述」,「変容の感覚(正・負)の可視化」,「自己開示・感情の表出」,「行動様式のラベル化」,「思考の促し」の7つのカテゴリに分類され,話し合いの経験が十分ではない1年生の児童に対して,共有可能な経験知としてGRを学ばせていることが示唆された。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕学び合い,対話,授業,共感性,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で「共感性の重要性や意味(=共感性の価値)」を学ぶ体験を通して,共感性得点に変化がみられるか否かを明らかにすることであった。1学期から2学期の授業の中で「学び合う授業」が展開されるようになったことが示された学級の児童を対象に分析を行った。まず,児童は,学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得るのかを検討した結果,(1)インタビューの中で,共感性の価値に言及する内容を自発的に語るようになっていること,(2)授業のやりとりの中で,自発的に共感的振る舞いに取り組むようになっていること,(3)「共感性の価値」の実感の程度を調べる質問紙得点が,1,2学期の間に有意に増加していること,の3点から,児童は学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得ることが示された。次に,授業の中で体験した「共感性の価値」の学びが,共感性の高まりに繋がっているかを検討した結果,1学期から2学期にかけて「共感性の価値」得点が増加した児童の多くは,「共感性」得点にも高まりが示されることが確認された。本研究の結果からは,学び合う授業が,児童の共感性育成の場として機能し得ることが示唆された。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕話し合い,学び合い,発言行動,教師の働きかけ,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で,教師がどのような働きかけを実践していくことが,「児童が積極的に発言できるようになる」という変化を引き起こすことに繋がっていくのか,を明らかにすることであった。学び合う授業に熟練した教師が担任となった学級の児童のうち,「1学期当初は,発言することに強く抵抗し,ほとんど発言できなかったが,2学期後半頃から自発的に発言できるようになった」T児に注目し,T児の変化を生み出した教師の働きかけを,教師・T児・観察者の3つの視点から総合的に分析した。その結果,児童の積極的な発言行動を促すためには,次のような教師の働きかけが重要であることが示唆された。それは,児童に可能な範囲で発言を試みさせる過程で,①クラスの児童達が,発言児に対して共感的に関われるようになるための働きかけを行うことにより,児童達が「自分の発言に対して,周囲のみんなは共感的に関わってくれる」と認識できるようにすること,②発言することの意味を明示的にも潜在的にも伝える働きかけを行うことにより,児童達が「自分が発言することは,ここでの学びを深めていくために役に立つ」と認識できるようにすること,である。

高垣マユミ,田爪宏二,中島朋紀,丸野俊一
〔キーワード〕二面的開示の分析,授業コミュニケーション,意図されざるカリキュラム,教師の役割の多様性,交流的関係性
本研究の目的は,小学4年国語科の一斉授業において,従来見過ごされてきた,教師の意図したカリキュラムから逸脱した教授・学習活動に焦点を当て,その談話過程における教師と子どもの授業コミュニケーションの言葉や行為の背後では,いかなる心理的なやりとりが立ち現れているのかを,探索的に検討することである。教師の内観報告を踏まえながら,「二面的開示分析」に依拠したカテゴリー分析及び事例分析によって,教師と子どもの発話の逐語的・表層的内容ではなく,意味的内容を再生した結果,以下のことが実証的に明らかにされた。1)教師の意図せざるカリキュラム(unintended curriculum)における,教師と子どもの主体的側面における「認識レベル(表層的,論理的,感性的レベル)」の齟齬は,教師の振る舞う多様な役割に伴って変容することが明らかになった。2)教師の意図されざるカリキュラムにおいて,相互に依存し合っている「教師-子ども-カリキュラム」の関係性が,動的,相補的かつ一体的に変化した場合,「interaction(相互的関係性)」から「transaction(交流的関係性)」への転換が生み出される可能性が示唆された。