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佐藤康司
〔キーワード〕関連づけ,認知的能動性尺度,受動的認知,問題解決
研究1では、学習者による知識の関連づけの成立を測定し、課題解決や興味に及ぼす影響について検討した。119人の大学生が水に対する期待の溶解度と海流について書かれた二つの教材文を読んだ後、教材文の理解と関連づけを測定する問題に回答した。学生の半数は二つの教材文に関する関連づけ情報を提示されたが、残りの半数は提示されなかった。その結果、外的な関連づけ操作は直接には課題解決を促進せず、関連づけの成立が課題解決を促進することが確認された。また、関連づけの成立に学習者の何らかの内的要因の関与が示唆された。研究2では、学習者における受動的な認知の傾向を測定する「認知的能動性尺度」の信頼性を検討するとともに、受動的認知の傾向が関連づけや問題解決を阻害するかを調査した。研究1と同じ対象者82人について、認知的能動性尺度の得点と関連づけの可否との関連を調べてみると、認知的能動性が低いほど関連づけが困難であることが見いだされた。また、認知的能動性が発展的な課題の解決に影響を与えることも確認された。従って、認知的能動性が「学力格差」の問題と密接に関わる可能性があると考えられた。

佐藤康司,小倉裕美
本研究の目的は,物語教材の学習において,登場者の心情をより適切に解釈させるための教授方略の有効性を検証することであった。その方略とは,(1)描写の映像化方略:状況や行動の描写を具体的な情景としてイメージさせること,(2)解釈の検証方略:心情解釈の根拠となる文章をさがし解釈の妥当性を検討させること,の二つである。併せて,物語文の読解において何を重視するかという「読解観」の変容についても検討した。大学生27名を対象に「ごんぎつね」を教材とした授業を実施し,前後の調査結果を比較したところ,以下の点が確認された。(1)心情に関する根拠の希薄な恣意的解釈は修正され,より適切な解釈が獲得された。また、その解釈は複数の場面で一貫して利用された。(2)物語の主題や出来事の背景のように描写からは間接的な内容を重視する傾向が弱まり,個々の場面の描写を重視する読解観が優勢となった。授業経過などの分析から,解釈の検証方略の有効性が示唆されたが,描写の映像化方略については発問への具体化が不十分で効果を確認するに至らなかった。このことは読解観の変容が十分に大きくならなかった一因と考えられた