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尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕学び合い,対話,授業,共感性,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で「共感性の重要性や意味(=共感性の価値)」を学ぶ体験を通して,共感性得点に変化がみられるか否かを明らかにすることであった。1学期から2学期の授業の中で「学び合う授業」が展開されるようになったことが示された学級の児童を対象に分析を行った。まず,児童は,学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得るのかを検討した結果,(1)インタビューの中で,共感性の価値に言及する内容を自発的に語るようになっていること,(2)授業のやりとりの中で,自発的に共感的振る舞いに取り組むようになっていること,(3)「共感性の価値」の実感の程度を調べる質問紙得点が,1,2学期の間に有意に増加していること,の3点から,児童は学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得ることが示された。次に,授業の中で体験した「共感性の価値」の学びが,共感性の高まりに繋がっているかを検討した結果,1学期から2学期にかけて「共感性の価値」得点が増加した児童の多くは,「共感性」得点にも高まりが示されることが確認された。本研究の結果からは,学び合う授業が,児童の共感性育成の場として機能し得ることが示唆された。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕話し合い,学び合い,発言行動,教師の働きかけ,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で,教師がどのような働きかけを実践していくことが,「児童が積極的に発言できるようになる」という変化を引き起こすことに繋がっていくのか,を明らかにすることであった。学び合う授業に熟練した教師が担任となった学級の児童のうち,「1学期当初は,発言することに強く抵抗し,ほとんど発言できなかったが,2学期後半頃から自発的に発言できるようになった」T児に注目し,T児の変化を生み出した教師の働きかけを,教師・T児・観察者の3つの視点から総合的に分析した。その結果,児童の積極的な発言行動を促すためには,次のような教師の働きかけが重要であることが示唆された。それは,児童に可能な範囲で発言を試みさせる過程で,①クラスの児童達が,発言児に対して共感的に関われるようになるための働きかけを行うことにより,児童達が「自分の発言に対して,周囲のみんなは共感的に関わってくれる」と認識できるようにすること,②発言することの意味を明示的にも潜在的にも伝える働きかけを行うことにより,児童達が「自分が発言することは,ここでの学びを深めていくために役に立つ」と認識できるようにすること,である。

尾之上高哉,丸野 俊一,松尾 剛
〔キーワード〕話し合い,学び合い,談話方略,教師の認識,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の実現に向けて,教師は,児童の実態に応じながら如何に談話方略を運用しているのかを明らかにすることであった。学び合う授業づくりに熟練した教師が担任となった学級を対象に,縦断的な授業観察,教師へのインタビュー調査を行った。結果,教師は,⑴発言への消極性・伝え合う意識の低さを児童の実態と認識していた時期は,⒜児童の発言をそのまま言い直す働きかけを通して,児童に肯定的な評価を示し安心して発言できるようにする事や,他の児童に発言の内容を正確に伝える事を,⒝個人内の思考を明確にさせる働きかけを通して,伝え合うために必要な話し方や思考の仕方を学ばせる事を,図っていた。そして,⑵発言への意欲・伝え合う態度の芽生えを児童の実態と認識し始めた時期からは,⒜児童の発言に新たな意味を付与して言い変える働きかけや,⒝考え相互の関係性を思考させる働きかけを通して,児童が互いの考えを相互に繋いでいけるようになる事を,図るようになっていた。教師がそのように児童の実態に応じて談話方略を使い分けていたことが,徐々に児童主体の学び合いを授業の中に定着させていくことへと繋がったことが示唆された。