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梶原郁郎
〔キーワード〕微分を視る(微分の直観),微分の事例,⊿y(面積の増加分)の出どころ,⊿y/⊿x
本稿は,面積の微分を視る授業内容による教授学習過程の効果を報告している。本授業内容では「y=2x」「x2」「(x+1)(x+2)」を取り上げて,面積図を用いた次の思考手続きで微分の直観的理解の保障を指向している。(1)2xの面積図(縦2・横x)において⊿xxの延長線上にとる。(2)その場合,⊿y(面積の増加分)は面積図のどこになるか(⊿yの出どころ)。(3)⊿xを0に近づけていくと,⊿yは最終的にどこになるか。このように頭の中 で面積図を操作すれば,「x2」「(x+1)(x+2)」の場合も同様に,瞬間の増加率(微分)を視ることができる。本授業内容による実践の結果,「2x」「x2」の微分の数式操作はできるが意味理解が欠落している事前質問の状況は大きく改善され,事後質問において微分を直観できた生徒は,授業内容の事例と類似性の大きい「5x」と「x(x+2)」問題において正答者35名(95%)と37名(100%),類似性の小さい「πx2」問題において正答者36名(97%)であった。これらの事前事後質問の結果を含めて,本授業内容による教授学習過程の効果を本稿は報告している。

蛯名正司,宮田佳緒里
〔キーワード〕速さ・距離・時間の弁別,等速性の理解,単位時間あたりの距離,特別支援,小学6年生
本研究は,発達障害(ADHD)のある小学6年生男児を対象に実施した,速さの学習に関する実践報告である。対象児は,速さの公式を用いた課題解決は可能であったが,「速さの保存課題」では一定の速さで進む物体であっても「距離の短いほうが速い」という誤りを一貫して示した。そこで,第1回教授活動では,電車の模型を使用して,速さを「ノロノロ」,「スイスイ」,「ビュンビュン」と定性的に教示し,さらに比例関係を用いて速さ・時間・距離の弁別を促す活動を実施した。しかし,事後調査では,依然として速さ―距離の保存課題で不適切な反応が見られた。そこで,第2回教授活動では,速さの異なる電車模型を2台用いて,単位時間あたりの距離を計測したあと,速さを直接比較する活動を実施した。その結果,対象児の速さの捉え方が「距離の短い方が速い」から「距離の長い方が速い」に変容したことが示唆された。事後調査課題では,単位時間あたりの距離が等間隔であることを図で示された課題には解決できたが,速さ-距離の保存課題では依然として誤った反応を示した。以上の結果を踏まえて,本実践で実施した教授活動の有効性と限界について論じた。

蛯名正司
〔キーワード〕角度,不適切属性への着目,重ね合わせ,測定,算数困難の小学4年生
本稿は,算数の学習に困難を抱える小学4年生の男児を対象として実施した,角度の教授活動に関する実践報告である。対象児は,学校では角度を学習済みであったが,角度の大きさを比較する際に,不適切属性に着目する誤りがあった。そこで,1回目の教授活動では,不適切属性への着目を抑制するために,まず図形の重ね合わせ活動を行い,次に分度器を使った角度の測定活動を実施した。その結果,対象児は図形の重ね合わせ活動で直線と直線の重なりに注目することができず,さらに分度器で測定しない場合は角度の大小比較を正しく行うことができなかった。そこで2回目の教授活動では,活動の順序を入れ替え,まず分度器で角度の測定を行い,次に扇形の重ね合わせ活動を行った。その結果,扇形の重ね合わせ活動では,未測の角度であっても,重ね合わせによって角度が同じであることを判断できるようになった。このことから本稿の対象児にとっては,「測定を優先した角度の指導」の方が有効であることが示唆された。以上の結果を踏まえ,本稿で実施した「測定を優先した角度の指導」と,いわゆる「測定の四段階指導」に基づいた従来の角度の指導の有効性の範囲について論じた。

宇野忍,福山晶子
〔キーワード〕小学生,多動傾向,算数学習,学習環境づくり,応答的環境
本報告は、1997年4月から1998年3月までの1年間にわたる授業記録を基に、多動傾向にある小学2年生児童女児1名に対する援助の取り組みとその結果をまとめたものである。具体的には、対象児童の抱える困難さ(授業中に出歩く、整理整頓ができない、算数の足し算・引き算の学習と10の概念理解が十分でない)の改善を目標とし、学級文庫や工作コーナーの設置、教材・教具の選択など、学習環境の整備が、出歩き行動やかたづけ行動、算数学習の改善に効果をもったことが示され、その児童の得意な面、良い面を認め、それを生かした課題設定を行うなどの学習環境づくりのヒントが得られた。また、学習環境づくりの枠組みとして、O.K.ムーアの応答的環境の持つ5条件が有用であることが指摘された。