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蛯名正司,宮田佳緒里
〔キーワード〕速さ・距離・時間の弁別,等速性の理解,単位時間あたりの距離,特別支援,小学6年生
本研究は,発達障害(ADHD)のある小学6年生男児を対象に実施した,速さの学習に関する実践報告である。対象児は,速さの公式を用いた課題解決は可能であったが,「速さの保存課題」では一定の速さで進む物体であっても「距離の短いほうが速い」という誤りを一貫して示した。そこで,第1回教授活動では,電車の模型を使用して,速さを「ノロノロ」,「スイスイ」,「ビュンビュン」と定性的に教示し,さらに比例関係を用いて速さ・時間・距離の弁別を促す活動を実施した。しかし,事後調査では,依然として速さ―距離の保存課題で不適切な反応が見られた。そこで,第2回教授活動では,速さの異なる電車模型を2台用いて,単位時間あたりの距離を計測したあと,速さを直接比較する活動を実施した。その結果,対象児の速さの捉え方が「距離の短い方が速い」から「距離の長い方が速い」に変容したことが示唆された。事後調査課題では,単位時間あたりの距離が等間隔であることを図で示された課題には解決できたが,速さ-距離の保存課題では依然として誤った反応を示した。以上の結果を踏まえて,本実践で実施した教授活動の有効性と限界について論じた。

宮田佳緒里
〔キーワード〕誤認識,説明文と図からの学習,力の分解,大学生
変数間の共変関係を可視化する図の呈示は,関係性の理解を促進することが知られている。特に,教授内容に関する知識の少ない者に対して,図の呈示は効果を持つ。一方,教授内容に関する誤認識を有する者に対しては,図の呈示による教授活動が必ずしも効果を持たないとの知見もある。そこで本稿では,学習者の有する誤認識が説明文と図からの情報の読み取りにどのように影響するかを検討した。大学生134名を対象に,教授内容である力の分解に関する認識調査,及び説明文と図による力の分解の教授活動を行った。その結果,誤認識所有者は,呈示された分力の値を誤りと判断した者の比率が高く,誤認識と一致しない情報を妥当性が低いとの理由で受容しない傾向が示された。このことから,変数間の共変関係に関する学習者の認識は説明文と図から読み取られた情報の妥当性を吟味するために用いられ,認識と一致しない情報の受容に妨害的に作用すると推察された。

 

宮田佳緒里
〔キーワード〕ルール学習,構成要素,力のつりあい,大学生
力学分野の問題解決の先行研究より,学習者が力を正しく認知できないという知見が得られている。これに基づき,本研究では大学生84名を対象に「行為者」と「物体の運動」という構成要素に基づく力の認知が,2力のつりあいルールの事例での2力認知を妨害するかを検討した。その結果,2力非明示問題において,行為者が存在する事例,物体が運動する事例での2力認知率が高かったことから,学習者の力の認知には,事例における行為者の存在及び物体の運動という2要因の関与が示唆された。また,ルールの所有状況と2力認知の有無との間に有意な連関が見られなかったことから,2力のつりあいルール所有者も非所有者と同様に,行為者と物体の運動に基づいて力を認知しており,ルールを適用できる事例が限定的になっていることが明らかになった。以上の知見から,行為者と物体の運動に基づいて力を認知することが,事例における力の認知に制約を与え,結果としてルールの適用が阻害されると推察された。