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工藤与志文
〔キーワード〕理科実験,観察の理論負荷性,重さの保存性,誤ルール,小学生
本論文では,小3理科授業において,「塩は水にとけない」という事実誤認が生じた事例を報告する。当該授業では,重さの保存性に関するルール(出入りがなければ重さは変わらない)の理解を目標の一つとしていた。一連の理科実験では,発泡入浴剤を水にとかして,泡(気体)の発生による重さの減少を観察させた。さらに,塩を水にとかす実験で,とけても物の重さは変わらないことを観察させた。しかしながら一部の児童は,入浴剤がとけたので重さが減った,重さが変わらないのだから食塩は水にとけないと結論づけてしまった。これらの事実は「観察の理論負荷性」の観点から考察され,「とけると重さが減少する」という誤ルールを持った児童と授業者は互いに異なった観察行為を実践していた可能性が示された。

工藤与志文
〔キーワード〕代理的知識操作,発問,教材解釈,理科授業,小学生
知識操作とは,学習者が課題解決のために知識表象を変形操作する心的活動のことである。本研究の目的は,小学校の理科授業における授業者と学習者の相互交渉過程を知識操作の観点から分析することであった。分析においては特に,学習者が行うべき知識操作の一部を教授者が代理的におこなう「代理的知識操作」に焦点を当てた。その結果,(1)学習上望ましい知識操作を自発的に行う学習者が少ないこと(2)発問の形式での代理的知識操作が学習を促進する効果を持つこと(3)授業者にとって代理的知識操作の重要性は必ずしも自明ではないことが示された。以上の結果から,代理的知識操作が学習者にとって補償的な機能を持つこと,および代理的知識操作の実行は授業者の教材解釈に大きく依存することが示唆された。

佐藤誠子
〔キーワード〕授業,学習者によるまとめ,知識,抽象化,小学生
授業を創る際,教師は学習目標を設定し,学習者のもつ既有知識や事前の達成状況等を考慮して教材や教授法を選択する。では,設計された教授条件のもとで,学習者は何を理解しどのようなことを知識としてまとめるのか。また,学習目標はいかなる場合に達成されるのか。本研究では,授業において学習者自身が形成する知識の様相を明らかにし,さらに,それが後続の課題解決にどのような影響を及ぼすかを検討した。その際,具体物モデルを用いた面積の授業を取り上げ,学習者が形成した知識の様相として「授業後のまとめ」の内容に着目した。小学6年生29名を対象とした授業の分析を行った結果,①教授者側が数学的概念に焦点化したまとめを提示しても,学習者の理解は授業で扱われた具体物の現象的理解にとどまることがあり,その場合,後続の課題解決が阻害されてしまうこと,②後続の課題解決が促進されるのは,学習者自身が授業で扱った具体物の現象的理解を数学的概念に抽象化し,とりわけ数学的概念と具体物操作を関連づけて理解できたときであることが明らかになった。これらの結果から,教材に対する学習者の理解を把握し,教授法を調整する必要性について論じられた。

工藤与志文,小石川秀一
〔キーワード〕理科授業,電流の学習,認識のずれ,小学生,教師
本論文は,小5「電流が生み出す力」の授業実践における子どもの認識とそれに関する教師の認識とのずれを示す事例の報告である。これらの事例では,事実認識
とコトバの意味に関して,教師の想定していた子どもの認識と実際の子どもの認識が大きく食い違っていた。4つの事例の分析を経て,以下の点が論じられた。 ①事例で示された認識のずれは,教師と子どものやりとりの中で初めて顕在化するような微妙なものであったが,授業目標の実現に大きな影響を与えるもので
あった。②子どもの思考は具体的なイメージにしばられる傾向があり,これが認識のずれをもたらす要因の一つであった。また,コトバの操作だけでイメージを 変化させるのは困難であった。③子どもたちに抽象概念を理解させるために,具体的な現象に置き換えて教えることは重要だが,それだけでは,個別の現象の学
習にとどまってしまう可能性が高いことが示された。この点を克服するためには,抽象概念と個別的現象を結びつけるはたらきをもつ経験が重要である。

林原慎
〔キーワード〕国際理解,参加型学習,ビッグ・ファイブ,認知的熟慮性-衝動性,小学生
本研究の目的は,近年,多く実施されるようになった参加型学習を取り入れた国際理解教育において,児童の性別,経験,背景,主要5因子説(ビッグ・ファイブ)の性格,認知的熟慮性-衝動性がどのように影響するのかを実証的に明らかにすることであった。研究の結果,小学校5年生(70名)では,性別,経験(海外旅行経験,英会話教室への参加経験),背景(友人,親戚,教貝の数)は,授業理解度と国際理解の意識に影響を与えないことが分かった。一方,協調性および熟慮性は国際理解の意識に影響していた。協調性,統制性および熟慮性は授業理解度に影響していた。また,参加型学習の活動のみに満足した児童は,参加型学習の内容に満足した児童よりも効果が低いことが分かった。活動のみに満足した児童は,他の児童に比べ,統制性と熟慮性が有意に低かった。内容に着目できている児童は授業理解度において得点が高かった。結果として,授業の効果は児童によって差があることが分かった。

岡田いずみ
〔キーワード〕割合文章題,分数表示方略,小学生,統合過程
割合の文章題を解くことは小学生にとって難しいことがこれまでの研究で示されてきた。いくつかの研究では,学校で学習した公式を用いずに解く児童が多くいることも示されている。これは,割合文章題の解決を困難にしている原因のひとつに公式の使いにくさがあることを示すものである。本研究では,算数の文章題についての心理学研究の知見に基づいて,割合文章題に関するよりよい教授方法を考案しその効果を検討した。算数の文章題を解決するためには統合過程の成立が重要であるとされる。統合過程を成立させるために,児童にとって既知の内容である分数を用いた方略(分数表示方略)を教授した。小学6年生125人を対象として,事前テスト,介入授業,事後テスト,2週間後の追加調査を実施した。正答率は,事前(64%)から事後(90%)に上昇した。追加調査においても正答率は維持されており,今回の教授方法の効果が確認された。

吉國秀人,生田国一
〔キーワード〕三態変化,ルール,教授活動,小学生,誤認識
本研究では,「物質が三態変化する(個体⇔液体⇔気体)」というルールの学習場面を取り上げた。本研究の仮説は,仮説1「授業前の小学生においては,物質の状態変化に関する誤認識が認められるだろう」,仮説2「水以外の物質を含めて三態変化を教授することにより,状態変化に関する誤認識が修正されるだろう」であった。これらの仮説を検証するために,小学4年生32名を対象に,事前調査,教授活動・事後調査が実施された。その結果,以下のような結果が得られた。(1)事前調査時には「加熱しても液体にも気体にも変化しない」などの誤認識を有していた。(2)「加熱すれば液体へ変化し,さらに強く加熱すれば気体へと状態は変化する」という認識へ,誤認識が修正された。(3)水の三態に関する理解も十分なされた。(4)全体の54%の者が,ルール「物は三態変化する」を一貫して適用できるようになり「ルール理解者」とみなされた。これらの結果から,仮説1ののみが支持され,「気体への変化」に関するプラン改善の必要性が考察された。

宇野忍,福山晶子
〔キーワード〕小学生,多動傾向,算数学習,学習環境づくり,応答的環境
本報告は、1997年4月から1998年3月までの1年間にわたる授業記録を基に、多動傾向にある小学2年生児童女児1名に対する援助の取り組みとその結果をまとめたものである。具体的には、対象児童の抱える困難さ(授業中に出歩く、整理整頓ができない、算数の足し算・引き算の学習と10の概念理解が十分でない)の改善を目標とし、学級文庫や工作コーナーの設置、教材・教具の選択など、学習環境の整備が、出歩き行動やかたづけ行動、算数学習の改善に効果をもったことが示され、その児童の得意な面、良い面を認め、それを生かした課題設定を行うなどの学習環境づくりのヒントが得られた。また、学習環境づくりの枠組みとして、O.K.ムーアの応答的環境の持つ5条件が有用であることが指摘された。