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蛯名正司,宮田佳緒里
〔キーワード〕速さ・距離・時間の弁別,等速性の理解,単位時間あたりの距離,特別支援,小学6年生
本研究は,発達障害(ADHD)のある小学6年生男児を対象に実施した,速さの学習に関する実践報告である。対象児は,速さの公式を用いた課題解決は可能であったが,「速さの保存課題」では一定の速さで進む物体であっても「距離の短いほうが速い」という誤りを一貫して示した。そこで,第1回教授活動では,電車の模型を使用して,速さを「ノロノロ」,「スイスイ」,「ビュンビュン」と定性的に教示し,さらに比例関係を用いて速さ・時間・距離の弁別を促す活動を実施した。しかし,事後調査では,依然として速さ―距離の保存課題で不適切な反応が見られた。そこで,第2回教授活動では,速さの異なる電車模型を2台用いて,単位時間あたりの距離を計測したあと,速さを直接比較する活動を実施した。その結果,対象児の速さの捉え方が「距離の短い方が速い」から「距離の長い方が速い」に変容したことが示唆された。事後調査課題では,単位時間あたりの距離が等間隔であることを図で示された課題には解決できたが,速さ-距離の保存課題では依然として誤った反応を示した。以上の結果を踏まえて,本実践で実施した教授活動の有効性と限界について論じた。

蛯名正司
〔キーワード〕高さ,平面図形,斜辺,同定方略,小学6年生
三角形や平行四辺形の面積の学習では,高さの理解が重要であるが,高さの同定を誤る児童は少なくない。そこで,本稿では高さの同定を促進するために,斜辺を用いる方略を考案し,その効果を検証した。斜辺を用いる方略とは,「図形の斜辺を見つけ,斜辺の一番上から底辺に垂直に線を引く」というものであり,この方略を用いることで,斜辺と高さを混同する誤りが抑制されることが予想された。また,斜辺を用いる方略を導入する際に,斜辺をハシゴ,底辺を地面と対応させることで,方略の理解が促進されると予想された。小学6年生を対象に,ほぼ同様の授業を2度実施した(授業1,授業2)。その結果,授業1・2の両方で高さの作図課題の正答率が上昇し,授業2では一部の求積課題の正答率も上昇した。また,授業の感想に記述された内容から,斜辺を用いる方略を使って同定することや,斜辺をハシゴ,底辺を地面と見なすことが有効であることが示唆された。一方で,授業で用いた課題との類似度が低い求積課題では,依然として「底辺×斜辺」という誤りが見られたことから,方略の教示だけでは,抽象的な高さ概念を獲得するには不十分であることが示唆された。

佐藤誠子
〔キーワード〕面積学習,外的操作活動,公式,等周長変形,小学6年生
基本的平面図形の求積公式を学習した後の学習者でも,図形の具体的な長さの数値が与えられていない問題状況になると,公式を使えず,底辺や高さの相対的な大小から面積の大小を推論することができない者が少なくない。本稿では,数値がなくとも底辺と高さの変化から面積変化を導出できることを理解させ,面積が直交する2方向に拡がる量であることを実感させるために,等周長変形を教材として用いた授業プランを立案し授業実践を行った。授業での主要なポイントは,①等周長変形を紙上で提示するのではなく,実際の手操作として行わせること,②具体物を用いて連続的な等周長変形に伴う面積変化を実感させることであった。授業の結果,等周長変形の操作活動を通して面積変化を捉えることの面白さに言及する感想が多くみられ,具体的数値がなくとも公式を用いて面積変化を推論することの面白さを実感させることができた。しかし同時に,具体物によって示された現象的な面積の理解にとどまった学習者もみられた。具体物の操作活動によって抽象的概念を捉えさせる際,授業者側のねらいと学習者側の認識との間にずれが生じてしまう可能性があることが課題として指摘された。

佐藤誠子
〔キーワード〕面積大小判断,等周長変形課題,保存概念,小学6年生
<p>底辺を固定したまま長方形枠を平行四辺形に変形させたときの面積の変化を問う「等周長変形課題」は,求積公式を適用することで解決可能であるにも関わらず,「面積同じ」と判断する誤りが多くみられる。このことに関して,等周長変形課題では求積公式に関する知識よりも保存概念の方が活性化されやすく,それが面積判断に不適切に適用されるためであると想定した。そうした場合,公式を適用した問題解決が可能になるには,概念の不適切な適用を抑制させる必要があると思われる。そこで,本研究では,面積学習後の小学6年生を対象に,等周長変形課題の3次元化による面積変化の提示が,保存概念の不適切な適用を抑制し,結宋的に公式に依拠した正しい判断へと導くかどうかを検証した。その結果,面積変化を提示された群では等周長変形課題の正答率が上昇し,事前から事後にかけて誤答から正答に変容した老が多いことが示された。しかし一方,正答率が低下した問題もみられた。等周長変形の面積変化の提示の際,学習者は高さの変化よりも形の変化に着目し,「長方形から平行四辺形に変わったら面積は小さくなる」という知識を形成している可能性があることが示唆された。