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佐藤誠子
〔キーワード〕授業,学習者によるまとめ,知識,抽象化,小学生
授業を創る際,教師は学習目標を設定し,学習者のもつ既有知識や事前の達成状況等を考慮して教材や教授法を選択する。では,設計された教授条件のもとで,学習者は何を理解しどのようなことを知識としてまとめるのか。また,学習目標はいかなる場合に達成されるのか。本研究では,授業において学習者自身が形成する知識の様相を明らかにし,さらに,それが後続の課題解決にどのような影響を及ぼすかを検討した。その際,具体物モデルを用いた面積の授業を取り上げ,学習者が形成した知識の様相として「授業後のまとめ」の内容に着目した。小学6年生29名を対象とした授業の分析を行った結果,①教授者側が数学的概念に焦点化したまとめを提示しても,学習者の理解は授業で扱われた具体物の現象的理解にとどまることがあり,その場合,後続の課題解決が阻害されてしまうこと,②後続の課題解決が促進されるのは,学習者自身が授業で扱った具体物の現象的理解を数学的概念に抽象化し,とりわけ数学的概念と具体物操作を関連づけて理解できたときであることが明らかになった。これらの結果から,教材に対する学習者の理解を把握し,教授法を調整する必要性について論じられた。

尾之上高哉,丸野俊一
〔キーワード〕学び合い,対話,授業,共感性,教授・学習過程
本研究の目的は,学び合う授業の中で「共感性の重要性や意味(=共感性の価値)」を学ぶ体験を通して,共感性得点に変化がみられるか否かを明らかにすることであった。1学期から2学期の授業の中で「学び合う授業」が展開されるようになったことが示された学級の児童を対象に分析を行った。まず,児童は,学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得るのかを検討した結果,(1)インタビューの中で,共感性の価値に言及する内容を自発的に語るようになっていること,(2)授業のやりとりの中で,自発的に共感的振る舞いに取り組むようになっていること,(3)「共感性の価値」の実感の程度を調べる質問紙得点が,1,2学期の間に有意に増加していること,の3点から,児童は学び合う授業の中で「共感性の価値」を学び得ることが示された。次に,授業の中で体験した「共感性の価値」の学びが,共感性の高まりに繋がっているかを検討した結果,1学期から2学期にかけて「共感性の価値」得点が増加した児童の多くは,「共感性」得点にも高まりが示されることが確認された。本研究の結果からは,学び合う授業が,児童の共感性育成の場として機能し得ることが示唆された。

伊藤達彦
〔キーワード〕時差,教材の開発,授業,中学生
「時差」は中学1年の社会科で扱われる内容である。しかし著者の予備的研究では,大学生でも時差に関する問題を解決できない者が多いことが示されている。本研究は,中学生が時差について理解できるような教材を開発し,実際に授業を行うことでその効果を検討した。開発された教材は,①地球の自転に伴う昼夜のでき方の知識と結びつける,②北極を中心にして地球を俯瞰的に捉えた図を用いる,③その略図を描いて時差を考えるという方略を教える,④日付変更線を「時刻の先頭」と意味づける,⑤課題配列を工夫する,などの特徴を持っていた。この教材を用いて13名の中学生に対して90分間の授業を行った。時差に関する事前テストの正答率は約20%であったが,授業1週間後に実施した把持テストでは約90%に上昇した。また生徒がこの授業を面白く理解しやすいものと受け止めたことが,授業後のアンケートならびに感想から示された。