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伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕数学的証明,ピタゴラスの定理,美しさ評定
本研究はピタゴラスの定理の証明法を複数提示することが,その証明法の美しさ評定にいかに影響するかを検討したものである。研究は実験1と実験2よりなり,両実験は各々2つのセッションからなっていた。1つはピタゴラスの定理の証明法についての講義,1つは当該証明法の美しさ評定であった。実験1の複数群には,一般に共に美しいと評価されている2つの証明法(AとB)が用いられた。単一群には,複数群に提示された証明法の1つ(B)が用いられた。その結果,同じ証明法Bであっても美しさ評定が異なり,複数群の方が単一群よりも高く評定した。実験2の手続きは実験1と同じであったが取り上げられた証明法が異なった。複数群には,一般に美しいと評価される証明法Bと,美しいとは評価されない証明法Cの2つが用いられた。単一群には,複数群に提示された証明法のうち,一般に美しいとは評価されない証明法Cの1つが用いられた。その結果,同じ証明法Cであっても美しさ評定が異なり,複数群の方が単一群よりも低く評定した。証明法の複数提示の効果は,用いる証明法の組合せによって異なることが明らかとなった。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例,概念の学習
本実験は,伏見・立木(2009)の研究結果をふまえ,焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響をさらに検討したものである。「緑の植物(種子植物)は花を咲かせ,花の咲いていたところに種子をつける」というルールを取り上げ,大学生206人を対象に実験を行った。実験は,事前テスト,文章教材の読み取り,操作課題,信念課題,事後テストの順に実施された。2種の文章教材を用意し,一方の群には学習者の既有知識(誤概念)と抵触する事例(サツマイモ)を,他方の群には誤概念と抵触しない事例(アサガオ)を用いてルールを説明した。その結果,〈1)提示事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぽさないこと,(2)誤概念と抵触する事例(サツマイモ)を用いる効果はおもに正誤群(操作課題に正答,信念課題に誤答)の事後テスト得点の伸びに現れることが示された。伏見・立木(2009)と同様の結果が得られた。抵触する事例を用いることの効果は、誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕科学的知識の学習,情感の生起,大学生
本研究の目的は「科学的知識の学習は情感の生起に関係する」という考えを実証することにある。実験1では大学生40人を対象にして「人間の背骨」の特徴を記述した読み物教材を読ませた。その結果,当該学習内容をより良く学習した者の方が,そうではなかった者に比べ,人間の背骨の仕組みに「すごさ」「すばらしさ」などの情感をより多く生起させた。実験2では大学生80人を対象に「親潮と黒潮の特徴」という内容が「気体の溶解度」と関連づけられた場合の情感の生起について検討した。実験の結果,2つが関連づけられると,関連づけられなかった場合に比べ,自然の仕組みのすばらしさや美しさに強い情感を生起させる者が多く生じた。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例の適い,概念の学習
概念学習を阻害する要因の1つとして,学習者の論理変換操作の不十分さが指摘されている。本研究の目的は焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響を検討することにある。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。実験は事前テスト,文章教材の読み取り・操作課題,信念課題・事後テストの順に実施された。2種の文章教材が用意され,一方は誤概念と抵触する焦点事例(カルシウム)を,他方は誤概念と抵触しない焦点事例(銅)を用いてルールを説明した。その結果,(1)焦点事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぼさなかったこと,(2)抵触する焦点事例を用いた場合には,操作課題ができていれば信念課題ができなくても事後テスト得点の伸びを抑制しなかったが,抵触しない焦点事例を用いた場合には,事後テスト得点の伸びを抑制したことが示された。誤概念と抵触する事例を用いることの効果は,誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

立木徹,伏見陽児
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,ルール
学習者が学習内容に関して誤概念を有しており,それが学習成果に大きく影響を及ぼすことは,今や常識と呼べるまでになっている。これまで学習者の誤概念を修正するためにさまぎまな教授方略の有効性が検討されてきた。そこでの効果はおもにテスト得点の伸びという測度で評価されている。本研究の目的は,それらの実験においてテスト得点の伸びを抑制していたのは,誤概念に対する学習者のこだわりだけではなく,彼らの論理変換操作の不十分さもあったのではないかという問題を検討することにあった。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。その結果,(1)教材文の記述内容〈ルール)から論理変換する操作を適切にはできない大学生が少なからず存在すること,(2)事後テスト得点には,誤概念に対するこだわりよりも,読み物内容からの論理変換操作の不十分さが強く関わっていたこと,等が示された。テスト得点を従属変数として実験を行い,学習者の誤概念に学習成果抑制の原因を帰属させていた研究結果についても,学習者の論理変換操作の不十分さという観点も考慮した再分析を行う必要があることが指摘された。

立木徹,小石川秀一,伏見陽児,福山晶子,岩崎哲郎,菊池明
〔キーワード〕製作活動,ティーチングアシスタント,とらえ方の変容,大学生,学外実習
本報告は,ティーチングアシスタントという形式で大学生に行わせた学外実習体験(子どもたちが製作活動を行う場面での支援)が,どのような教育効果を生み出すのかを検討したものである。主な結果は以下の通りであった。(1)実習は参加学生にとって十分満足できるものであった。(2)大半の学生が,製作活動に対する子どもの集中度や工夫する様子,完成した際の彼らの喜びや満足感,さらには道具の使用状況に着目し得た。(3)「小学校における製作活動」に対する学生のイメージがより肯定的な方向に変化した。(4)「小学校における製作活動」は,道具使用に熟達する,科学的原理を理解する,美を追求する,という側面に教育的に有効であると,学生はより強く思うようになった。さらに,(5)「ものを手作りすること」一般に対して肯定的にとらえるようになった。

伏見陽児,立木徹,市川洋子,岩崎哲郎
本研究の目的は、小学生向けの製作活動を小学校教師自らに体験させることにより、「小学校における製作活動」に対する彼らの捉え方をより良い方向に変容させ得ることを検証することにあった。この目的のため全7回(各回おおよそ90分間)よりなる講座「小学校における製作活動を考える」を開設し、各回とも製作活動を体験させた。主な結果は以下の通りであった。(1)小学生を念頭においた製作物であっても教師は十分に楽しんでその製作に取り組んだ。(2)研修で取り上げた製作活動について、当該活動が小学生に及ぼす教育効果をより高く評価するようになった。(3)小学校における子どもの製作活動全般に対する教師の情緒的イメージが、より肯定的な方向に変化した。(4)「小学校における子どもの製作活動」全般が持つ教育効果について、より高く評定するようになった。(5)普段の生活の中でものを手作りすることについて、肯定的側面を高く、否定的側面を低くとらえるようになった。