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小林寛子
〔キーワード〕説明,教授法,概念変化,誤概念,大気圧
これまでに,学習者の誤概念を修正することを目的として,教授者が学習者に提示する事例の種類やその提示順を検討して,教授法を提案する試みが様々に行われてきた。しかし,こうした教授の後には,学習者自身が改めて,教えられた内容を確認し,理解を構築していくことの必要性も指摘されている。そこで,本研究では,こうした説明活動の導入が概念変化に及ぼす効果について,実証的に検討することを目的とした。具体的には,まず,「真空は物を吸い寄せる力を持つ」という誤概念が見られる「大気圧」について,106名の大学生を対象に授業を行った。その後,対象者を,教えられた内容について自分で説明し直す活動を行わせる群(説明群:52名)と,教師の説明を書き写させる群(書写群:54名)にランダムに割り当てて,両群の学習効果を比較した。結果,書写群よりも説明群の学習者の方が,学習した内容を後続の問題を解く手がかりとして用いやすくなることが明らかとなった。以上の知見から,学習者の誤概念を修正するために,概念変化に必要な教授を行った後に,学習者が教えられた内容を自分の言葉で説明し直す活動を導入することの有用性が示唆された。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例,概念の学習
本実験は,伏見・立木(2009)の研究結果をふまえ,焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響をさらに検討したものである。「緑の植物(種子植物)は花を咲かせ,花の咲いていたところに種子をつける」というルールを取り上げ,大学生206人を対象に実験を行った。実験は,事前テスト,文章教材の読み取り,操作課題,信念課題,事後テストの順に実施された。2種の文章教材を用意し,一方の群には学習者の既有知識(誤概念)と抵触する事例(サツマイモ)を,他方の群には誤概念と抵触しない事例(アサガオ)を用いてルールを説明した。その結果,〈1)提示事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぽさないこと,(2)誤概念と抵触する事例(サツマイモ)を用いる効果はおもに正誤群(操作課題に正答,信念課題に誤答)の事後テスト得点の伸びに現れることが示された。伏見・立木(2009)と同様の結果が得られた。抵触する事例を用いることの効果は、誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

伏見陽児,立木徹
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,提示事例の適い,概念の学習
概念学習を阻害する要因の1つとして,学習者の論理変換操作の不十分さが指摘されている。本研究の目的は焦点事例の違いという要因が,学習者の信念や論理変換操作,事後テストに及ぼす影響を検討することにある。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。実験は事前テスト,文章教材の読み取り・操作課題,信念課題・事後テストの順に実施された。2種の文章教材が用意され,一方は誤概念と抵触する焦点事例(カルシウム)を,他方は誤概念と抵触しない焦点事例(銅)を用いてルールを説明した。その結果,(1)焦点事例の違いは操作課題,信念課題の遂行に影響を及ぼさなかったこと,(2)抵触する焦点事例を用いた場合には,操作課題ができていれば信念課題ができなくても事後テスト得点の伸びを抑制しなかったが,抵触しない焦点事例を用いた場合には,事後テスト得点の伸びを抑制したことが示された。誤概念と抵触する事例を用いることの効果は,誤概念にこだわりを持ちつつも事後テストに正答できるようになる点にあると解釈された。

立木徹,伏見陽児
〔キーワード〕誤概念,論理変換操作,ルール
学習者が学習内容に関して誤概念を有しており,それが学習成果に大きく影響を及ぼすことは,今や常識と呼べるまでになっている。これまで学習者の誤概念を修正するためにさまぎまな教授方略の有効性が検討されてきた。そこでの効果はおもにテスト得点の伸びという測度で評価されている。本研究の目的は,それらの実験においてテスト得点の伸びを抑制していたのは,誤概念に対する学習者のこだわりだけではなく,彼らの論理変換操作の不十分さもあったのではないかという問題を検討することにあった。「金属ならば電気を通す」というルールを取り上げ,大学生を対象に実験を行った。その結果,(1)教材文の記述内容〈ルール)から論理変換する操作を適切にはできない大学生が少なからず存在すること,(2)事後テスト得点には,誤概念に対するこだわりよりも,読み物内容からの論理変換操作の不十分さが強く関わっていたこと,等が示された。テスト得点を従属変数として実験を行い,学習者の誤概念に学習成果抑制の原因を帰属させていた研究結果についても,学習者の論理変換操作の不十分さという観点も考慮した再分析を行う必要があることが指摘された。

進藤聡彦,中込裕理
〔キーワード〕発展的な学習,誤概念,多角形の内角の和,納得の過程
小学校5年生の算数では,図形の性質として多角形の内角の和が取り上げられる。本稿では,この内容の発展的な学習として,星形十角形の内角の和を求める過程を取り上げた授業実践を報告し,その内容が発展的な学習に適っているか否かについて検討した。その際,180°以上の内角(以下,優角)をもつ図形について,児童はそれらを内角と認めない適用範囲の縮小過剰型の誤概念をもつことが予想された。この点について事前調査を行ったところ,予想を支持する結果が得られた。この誤概念を利用すると同時に,優角をもつ内角をそれとして認めさせることに焦点を当て,授業実践と結果の分析を行った。その結果,既習の内角の和を手掛かりに優角も内角であることに納得する傾向が明らかになった。また,誤概念が学習を興味・関心のあるものにすると同時に,その修正は図形の外延の拡大にも資することが示された。こうした結果から,星形十角形の内角の和を求める過程を取り上げた学習は,図形の性質の学習に関する発展的な学習として適っていることが示唆された。